みなさま、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
このたび、ホームページのリニューアル第一弾が完成したのを機に、フェイスブックに事務所のページを登録をいたしました。多くの方から「いいね」をいただき誠にありがとうございます。
特にこれまであまり連絡がとれていなかった先生や古い友人からも多くの「いいね」をいただき、とても感激しております。
フェイスブックでの一押しがこれほどうれしいものとは知りませんでした。この新しく小さな事務所にとって、このような目に見える後押しはとても勇気づけられ、所員一同とても喜んでおります。
今回は、あらためて私たち文化財構造計画について説明したいと思います。
私たちは、文化財建造物をはじめとする歴史的建造物の構造に関する設計業務を主体とした建築設計事務所です.
具体的には、寺院や神社、民家、城郭、洋館などの歴史的な建物に対して耐震診断を行い、大きな地震が生じた時に建物が倒壊して内部や周囲にいる人に危害を与えないかを判断します。そしてその結果、建物の耐震性が不足していた場合には、耐震補強などの対策を講じます。それらの技術的な協力を行うことが主要な業務です。
文化財建造物は、構造設計に関して次の2点において一般の建築物と異なっています。
まずは、構造・工法が特殊であるということ。伝統的な木造や煉瓦造など近年ではあまり作ることがないため、明確な診断方法がない場合もあります。そのため、研究や実験についても調査し、それらの構造に関する知識をもつことが必要となります。
またもうひとつは、文化財としての取り扱いが必要になることです。文化財は、将来に受け継がれていく貴重な国民の財産であり、そのままの状態での保存に努めなければなりません。そのため、修理にあたっては、原則として同種同材を用いて元のとおりに修復する必要があります。
そのような文化財に対して、構造補強という物に手を加える行為を行う場合には、慎重に対処しなければなりません。文化財の価値を理解した上で、修理技術者とともに文化財的価値を最も損ねない方法での安全対策を考える必要があります。そのため補強の設計には、構造設計の技術だけではなく、文化財修理に対する知識も必要になってきます。
文化財建造物に対する耐震対策は、阪神大震災まではあまり考えてこられてきませんでした。しかし、震災で多くの木造建築が被害を受けたことから、文化財建造物でも耐震診断が積極的に行われるようになりました。
近年では、歴史的建造物を積極的に活用しようとする動きが活発であることから、活用に伴う安全対策がより多く求められるようになってきております。
私は、これまで文化財修理と構造設計の両方の実務を行ってきたことから、文化財建造物の修理設計を行っている団体である公益財団法人文化財建造物保存技術協会で構造担当として、多くの文化財建造物の構造に関するマネージメントを行ってきました。文化財修理技術者と構造設計者のそれぞれからの要望の間で生じる様々な問題を解決することが主な業務です。
東日本大震災の影響もあり、耐震診断の要望は増加する一方です。そのため、これまで協力を求めてきた文化財に理解のある構造実務者だけでは、手が足りなくなってきました。
だからといって、依頼する実務者をただ増やせばよいというものではありません。文化財建造物は、ひとつひとつがかけがえのない貴重ものです。文化財建造物に十分な知識のない設計者によって、文化財の価値が損ねてしまっては、もはや取り返しがつきません。しかし、文化財に理解のある構造設計者というのは、その当時にはなかなかおられないという状況でした。
「それならば私が実務者となり文化財保護の一端を担おう」と、始めたのがこの事務所です。
様々な文化財建造物に対して、文化財の価値を損ねず、かつ安全に安心して使うことができる方法とは何か。
その方法を考え、具現化することが私たちの仕事だと考えています。
その2へつづく
文化財構造計画 打合せスペース / 大阪