みなさま、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
まずは「文化財建造物」の用語の定義について確認しておきたいと思います。
一般に文化財建造物と言えば、
「行政庁に文化財として指定もしくは登録されている建造物」
となります。指定文化財と登録文化財の違いは、
指定文化財とは、行政に指定された文化財
登録文化財とは、所有者が行政の文化財登録原簿に登録した文化財
ということで、文化財にする主体が異なります。
文化財の登録制度は平成8年(1996年)に文化庁が制定した制度で、
従来の指定制度が重要なものを厳選し、強い規制と保護を行うのに対して、
登録制度は、届出制で緩やかな保護措置が講じられたものです。
そのため、保護や規制の対象や補助金等が異なります。
また、建造物単体として指定・登録されていなくても、
伝統的建造物群の構成要素としての建造物
記念物(名勝等)の構成要素としての建造物
民俗文化財の構成要素としての建造物
なども文化財建造物となります。
また、国だけでなく都道府県、市町村によって指定、登録されている文化財というのもあります。国が指定するものは、単に「国宝」や「重要文化財」と呼びます。地方自治体のものは○○県指定文化財と言ったり、「県宝」と言う名称を用いているところもあります。
そもそも文化財とは何を指すのでしょうか。文化庁のホームページによると、「文化財とは、我が国の長い歴史の中で生まれ、育まれ、今日の世代に守り伝えられてきた貴重な国民の財産」であり、「我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことの出来ないものであると同時に、将来の向上発展の基礎をなすもの」とされています。
その解釈で考えれば、歴史的建造物が文化財の指定や登録をされていないとしても、広義の意味では文化財建造物といって差し支えないように思います。建物の歴史的・文化的な価値は文化財と指定や登録をされたから生じてくるというものではありません。まだ指定・登録されていないだけで、将来にはいずれ指定や登録されるであろう建物もたくさんあるのですから。
というわけで、このブログでは文化財となっていない歴史的建造物も含めて「文化財建造物」としてひとくくりで扱いたいと思います。
ちなみに、うちの名前も「文化財構造計画」なので、
「文化財以外の建物の設計はしないのですか」とたまに聞かれます。
もちろんそんなことはありません。
文化財であろうとなかろうと、歴史的建造物であろうとなかろうと
復原でも新築でもビルでも公共施設でもなんでもさせていただきます(笑)。
もっとも、今ある仕事のほとんどは文化財建造物なんですけどね・・・
重要文化財 如法寺本堂 /愛媛県