みなさま、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
今週の金曜日は、初の事務所の社内研修なのですが、台風が来そうなのでとても心配です。なんとかそれてくれないものかと考えておりますが。。。
さて、今回は、文化庁が出している「地震から文化財建造物を守ろう!Q&A」について、お話をしたいと思います。
これは、重要文化財に指定されている建造物の耐震診断について書かれたパンフレットです。次のアドレスからPDFデータがダウンロードができます。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/hogofukyu/pdf/pamphlet.pdf
Q&A形式で書かれており、耐震診断の流れや補助事業の流れについて簡潔に記述されております。耐震診断とは何かよく分からない方には、非常に分かりやすい内容ではないかと思います。下にパンフレットに記載されている質問を列記します。
Q.文化財建造物の耐震対策はどのような流れで行われるのでしょうか?
Q.文化財建造物に行う耐震診断ってどのようなものですか?
Q.木造の建物に適応される予備的な耐震診断ってどのようなものですか?
Q.専門的な耐震診断とはどのようなものですか?
Q.耐震診断が終わったら、どのような対策を行うのでしょうか?
Q.文化財建造物には、どのような耐震補強をするのでしょうか?
Q.耐震補強以外には、どのような対策があるのでしょうか?
Q.どのような国庫補助事業が受けられますか?
Q.国庫補助を受けた例を、教えて下さい。
これを読めば耐震診断の概要について理解できると思います。このパンフレットは国の指定する重要文化財を対象としておりますので、補助金に関しては登録有形文化財や地方指定文化財には適用できませんが、全体の流れなどの内容については、国指定重要文化財でなくても参考にできます。
この次の段階の質問は、
Q.具体的にどのように進めればよいですか?
Q.費用や期間はどの程度かかりますか?
ということになろうかと思います。しかし、費用と期間については、建物によって進め方が異なるので一概には言えません。その建物の傷み具合や、構造検討に必要な図面が作成されているのかどうか、見えない部分の調査をどう行うか、どの段階までを実施するかなど、費用と期間を定めるには個別に条件を詰めていく必要があります。例えば煉瓦造であれば、壁通り毎の図面が入りますし、煉瓦や目地材の強度の確認などの構造調査も必要になります。
文化財は特殊で貴重であるがゆえに文化財なのですから、調査や診断、補強方法についても個別に判断していく必要があります。必要な調査内容を検討するところから始めて下さい。
具体的な進め方については、監督している地方公共団体の担当(文化財保護課など)や、文化財修理の設計を行っている専門家と協議を行うほうがよいでしょう。文化財建造物の扱い方には一般の建物の設計とは異なる注意事項があるので、対象建物の文化財のクラスと同程度以上の建物を扱ったことのある専門家がよいと思います。
耐震診断の業務を早く安く完成させるには、はじめに適切で綿密な計画を立てることが重要です。事前の調査が不足していたために、診断の後に調査を行った結果、診断結果がすべてが変わってしまったりする可能性もあります。また、補助金申請の時期に必要な内容が得られるようにしなければ、それだけで計画が1年遅れるという可能性もあります。
事業計画はすべてに影響をしますので、私たちもいつも慎重に対応しております。
ともかく、何事も始めなければ進みません。文化財建造物の耐震診断を行う際には、まずこのパンフレットをぜひご覧下さい。
また、もうすぐ文化庁より、耐震診断手法や補強の考え方にもっと具体的に記述された「文化財建造物の耐震診断・耐震補強の手引き」が出版される予定です。そちらも参考にされればよいかと思います。
では、今回はこの辺で。
文化庁文化財部参事官(建造物担当)作成