-第Ⅰ章 耐震診断・耐震補強の概要について その1-
みなさん、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
どんどんブログの間が空くようになって申し訳ございません。年度があけて少し間が空くかと思えば・・・。なかなか思うようにはいかないところです。
さて、今回は「重要文化財(建造物)耐震診断・耐震補強の手引」の説明をさせてもらいますが、まずは手引自体に目を通していただくのがよいと思います。その中で、私が特に注意したほうが良いと考える点をとりあげていきたいと思います。
まずは、「第Ⅰ章 耐震診断・耐震補強の概要」の第1節を説明したいと思います。
第1節 耐震診断・耐震補強の目的と考え方
ここはまず導入ですので、耐震に関する背景から、文化財建造物の耐震診断の必要性と耐震補強の考え方の概要が記載されています。
文化財建造物のほとんどは建築法規の成立以前の建物であり、法規の想定外の工法で建設されています。そのため、一般的な診断方法では適正に耐震性能を評価できない場合が多く、個々の建物の構造特性を詳細に評価して診断を行う必要があります。また、補強案の策定についても、意匠的な面の保存だけでなく、材料、工法といった面からの保存も考慮する必要があります。
耐震診断・耐震補強については、後の章で説明がなされておりますので、そのときに扱いたいと思います。
この節で私が重要と考えるのは4項です。
4 重要文化財(建造物)の耐震対策における所有者等の責任
耐震診断における前提としてもっとも重要な条件設定は、どこまでの安全性が必要かという判断を誰がするかということです。
誰が判断するか=誰が責任をとるか ということになります。
重要文化財建造物の耐震性について最終的な責任を負うのは誰か。それは所有者・管理者となります。手引の3頁に
”重要文化財(建造物)の安全管理は「文化財保護法」における所有者・管理責任者・管理団体の管理責任の範囲で行う行為である。”
と記載されています。建築、文化財の専門家や行政の助言を受けての判断にはなりますが、最終的には所有者等の責任になると明記されています。
この点を見失っては、責任の所在が曖昧になってしまいます。方針を定めるにあたっては、責任の所在について十分に留意しておく必要があります。
文化財建造物の場合、補強を行う際に建築の専門家や行政からもいろいろな意見、指導が出ることもあると思いますが、修理や改修が終わった後は、それらの方はみんないなくなってしまいます。その後、次の修理まで建物の安全に対する責任を背負って建物を守り続けるのは所有者等の方達です。
補強を検討する際には、その根本的なところだけは忘れないようにと、いつも考えております。
では、今回はここまでとさせていただきます。