みなさま、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
思った以上に長くなった「文化財建造物に耐震補強は必要なのか」シリーズがひとまず終わりました。私も一安心です(笑)。今回は、このテーマでブログを書いた経緯をあとがきとして書いていきたいと思います。
私は、前職である公益財団法人文化財建造物保存技術協会で構造担当として100棟以上の文化財建造物の耐震診断や構造補強に関わってきました。安全に関わる判断や補強方法を協議する中で、多くの方から「文化財建造物にどうして構造補強が必要なのだろう?」という疑問を投げかけられました。
建造物修理においてこれまで考えられてこなかった耐震対策というものが、急に必要ということになったのですから、その意義について疑問をもたれるのも当然のことと思います。実際、「文化財建造物の構造補強とはどのような理念のもとに行うべきか」ということは、個々の建物修理においては検討されてきたものの、日本における文化財建造物としての耐震補強のあり方としての理念は確立されておりません。修理技術者の方の中には「補強なんかいらないけれど、ご時世だから仕方がない。」といったように、全く意義を見いだせずに受け入れておられる方もおられました。
今回は、私がこれまでに遭遇した様々な場面で協議してきた内容を元に、ブログを書かせていただきました。もちろん自分なりの解答ですので、これが正解という訳ではありません。ただ、文化財建造物の保存に関わる人たちとの協議の中で研磨されてきた内容ですので、この疑問を解消する糸口が含まれているのではないかと思っています。
その7の内容は、私が文化財建造物の耐震補強の仕事をする上での信念といったほうがよいでしょうね。「何のために仕事をしているのか」ということを見失わないように、半分自分に向けて書いているようにも思います。
文化財建造物の耐震補強については、同じような悩みを持たれている方も多いのではないかと思い、まずはこのテーマを取り上げました。
みなさまの疑問を解消するきっかけになれば幸いです。
重要文化財 大阪府立図書館 /大阪