みなさま、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
いまごろ年明けはじめてのブログです。書いていないと書くのに身構えてしまい、どうしても筆が重くなってしまいます。
今日は、ここ最近思うことを書いてみたいと思います。
1月に入ってから、講座を二つしました。ひとつは、意匠設計者、工務店の方に古民家の耐震補強についてのお話。もうひとつは、行政の方、所有者の方を対象に文化財の保存活用計画とはどういうものかというお話をさせていただきました。
今回は古民家の講座をしていて思ったことを書いてみます。
古民家の改修と文化財の保存は一見似ていますが、実際はまったく別の物だと思います。
古民家の改修は、古い部分を活かすことが求められており、文化財は、古い価値のある部分を正しく残すことが求められています。文化財でも重要文化財と登録文化財では、さらに残し方の厳密さが変わってきます。
文化財の補強は価値を損ねないように保存する部分を変えないため、詳細に検討して進める必要がありますので、費用も時間もそれなりにかかってしまいます。これと同じ丁寧さでの検討を数多くの古民家で行うことは、実際難しいと感じています。
古民家の場合の多くは、活用のために間取りや意匠を変えることが行われます。ですので、結果として補強量が増えることになったとしても、診断・補強検討をもう少し簡単な方法を採用し、補強を意匠的にうまく処理することのほうが総合的にはよい場合もあるのではないかと思います。
補強をすると時間も費用もかかるので、なんとなく先送りしている場合もあるかもしれませんが、地震がくれば、そのツケはすべて、所有者、設計者にかかってきます。
せっかくの改修も人が傷ついてしまってはなんの意味もありません。いま補強なしでやり過ごしても、いつかまた補強の話があがってくるはずです。
補強せずに済ます理由を探すよりも、補強をセンスとアイデアでうまくデザインに組み込むことを考えるほうが、将来に対して前向きではないかと思っています。