みなさま、こんにちは。文化財構造計画の冨永です。
先日、スターバックスコーヒージャパン元CEOの岩田松雄さんの講演をお聞きしました。その中で「ミッションの大切さ」についてのお話をお聞きして非常に勉強になりました。今回は、私たちのミッションについて考えたいと思います。
岩田さんは、アトラスの社長を経て、ザ・ボディショップを運営する(株)イオンフォレストの社長、その後スターバックスコーヒージャパンのCEOをされたというすごい経歴の持ち主ですが、語り口は穏やかで、自分の経験や考えたことを中心にお話しされたので、とても聞きやすく分かりやすい内容でした。
人は、企業は何のために働くのか。
それは、「ミッションのためである」というのが岩田さんのお答えです。この場合のミッションは、経営理念という意味で用いられています。
スターバックスのミッションは、「人々の心を豊かで活力のあるものにすること」であり、ザ・ボディショップのそれは、「社会と環境の変革を追及し、事業を行うこと」となっているそうです。
そこには、コーヒーや化粧品をたくさん売ることや、利益を上げることが書かれているわけではありません。むしろそれらはミッションを行うための手段や過程にすぎないというのです。
これは一見すると、ただのきれいごとのようにも見えるのですが、自分たちの会社が何を目的としているのかということを理解した人たちは、実際に行動としてその理念が表れてくるので、その魅力がお客様や従業員同士に伝播し、どちらにも活力を与えるそうです。そうやって皆が幸せになることで、結果として企業としての価値や業績もあがったという体験に基づいたお話でした。
「企業とは、世の中をよくするためにある」ということを繰り返しおっしゃられてました。
私はそのお話を聞きながら、自分たちの仕事について改めて考えていました。
私たちのミッションは何か。
それは「文化財を社会に活かす」ということです。
実際に業務として行っていることは、建物の耐震診断を行って補強を設計することです。しかし、それはミッションを行うための過程のひとつにすぎません。
文化財建造物を活用し後世に伝えるために、求められている安全性を確保し、安心してつかうための耐震補強です。
ただ構造解析や設計を行うだけではなく、「なぜ耐震診断が必要なのか」「何のために補強を行うのか」「補強を行うことがどういうことに繋がるのか」ということを関係者に説明することも「ミッション」を実現するには必要なことです。
文化財建造物の耐震化についてどのように進めていくのが、もっとも所有者として文化財として有益なのか。そういう相談からお手伝いすることも、ミッションのためには必要です。
業務効率という面でいえば、業務内容を限定する方が容易なのですが、それだけではミッションは実現できません。
自分たちの出来ることを把握し、自分たちでできない場合は得意とする人たちに繋ぐことまでが、我々のミッションなのでしょう。
自分たちができることをするのではなく、人がしてほしいことを自分がどうできるか。
それができる事務所になるように精進していきたいと思います。
岩田さんは、ミッションについて本を出されていますので、興味がおありの方はどうぞ。