保存活用計画で最も重要なこと
みなさん、こんにちは。
文化財構造計画の冨永です。
私たちは、耐震診断と補強設計だけでなく、保存活用計画の策定も行っております。
文化財建造物の保存修理においてこれまであまり行われてこなかったので、その目的がよく分からない方もたくさんおられるかと思います。保存活用計画の策定を正しく行うことは結構難しいことですが、適切に作成できるとその後の管理や記録の保存や整理ができとても便利なものです。ここで少し説明をしていきたいと思います。
保存活用計画の目的ですが、どのように活用を行うかが最も重要なものではありません。
活用をする上で文化財の何をどう保存するのかというルールを決めることが、実は最も重要なことです。
文化財建造物を活用するときには、そのままでは不便であったり機能が不足していたりするので、部屋を改造したり、設備を付け加えたりする必要があることがあります。その際に、文化財として価値のある部分を壊してしまうかもしれません。それはとてももったいない話です。そうならないように、その建物でどこに価値があるのかを把握しておくかが重要になります。
また建物が当初の状態からいろいろ改造されている場合もありますよね。このときにどれを残すことが重要でどれを外してもよいのでしょうか。これは考え方で変わりますよね。初めの形が重要だと考えれば途中でついたものはすべていらないものになりますし、変化した最後の状態が最も重要だと考えればすべて残す必要があります。そのため、どういう方針で保存するかも決めておかなければなりません。
保存活用計画では、まず建物を詳細に調査しその価値と魅力をひもとくところから始まります。
建物の魅力や価値を理解し、どう保存していくのかの方針を立てて、その魅力を活かす活用を計画すること。
それが保存活用計画の目的となります。